空室四号

ゲームコラム中心雑記ブログ

レイⅡはインクリングの夢を見るか?

人生において、密かなこだわりを見出だすことができる何かをもつことは幸せである。さらにそのこだわりを共有できる誰かがそばにいることは最上だ。

彼は何故か『世界まる見えテレビ特捜部』と『木曜洋画劇場』が満載に録画された自作ビデオを大量に所有していた。

『丸見え』が放送される月曜日と、『木曜洋画劇場』が放送される木曜日の朝は欠かさず新聞のラテ欄をチェックし、面白そうな企画や映画だと感じたら必ず録画してから中学校へ向かうのだという。

学校へ行こう!』『めちゃイケ』『うたばん』『アサヤン』といった番組が大人気だった中で、『丸見え』や『木曜洋画劇場』に夢中になり、あまつさえ自作ビデオを作ってコレクションしている、というのは、当時の中学生としてはかなり渋い行動だった。

僕はそんな彼の話を聞いてつくづく変な奴だと思ったものだが、当時から何に関しても周囲に流されるままで特に強いこだわりをもたなかった僕にとって、とても魅力的に映った部分でもあった。

「この前のレスキュー911はすごかったぞ……!」

クリフハンガー初めて見たけど後半の展開めちゃくちゃすぎてヤバイでしょ……!」

彼の気さくな人柄がにじみ出た話し方は、僕にとって自然なプレゼンテーションになっていた。聞いているとなんとなくワクワクしてきて、ついつい普段はあまり見ない『丸見え』や『木曜洋画劇場』もチェックしてしまうのだ。

そしてそれはゲームにおいてもそうだった。Nintendo64カスタムロボV2』も彼にプレゼンテーションしてもらったゲームのひとつである。数あるパーツの中から自由にロボットをカスタマイズして戦うロボットアクションゲーム。

彼や共通の友人と集まって対戦する『カスタムロボV2』は、文字通り時を忘れるほど楽しくて、気づけば僕も少ないおこづかいをはたいてソフトを買ってしまっていた。

カスタムロボV2』のために集まり、『丸見え』や『木曜洋画劇場』の話をはさみながら暮れていく放課後は、すぐ過ぎ去ってしまう楽しい時間でありながらも、どこか無限に引き伸ばされたような不思議な時間感覚があった。おそらくそれは青春時代特有の感覚だ。

しかしみんなで夢中になったそんな『カスタムロボV2』もまた、一般的な評価で言えば「質は高いものの大人気には至らなかった、任天堂の輝かしい時代の影に埋もれた渋い良作ゲーム」ぐらいの評価と言わざるを得なかった。

 

大人気の『スプラトゥーン』に『カスタムロボ』の面影を見た

先日『Nintendo switch』と『スプラトゥーン2』を買った。

前から気になっていたゲームではあったのだが、購入の直接的な動機は「PS4でよく一緒にプレイするフレンドが買ったから僕も勢いで買った」ということになる(未だにゲームをプレゼンテーションしてくれる人が周りにいることはとてつもない幸せだ)。

そしてこの『スプラトゥーン2』というゲーム、買う前は「ポップでキュートなキャラクターがステージをイカに多く塗り合うのかを競うゲームなんだろ?」ぐらいの認識でいたのだが、どうもただそれだけではないようだ。

操作キャラクターである「インクリング」というイカは、ヒトの形態とイカの形態を目まぐるしく変身しながら戦うことになる。

ヒトの形態のときは様々なブキを使ってステージを塗ったり相手の邪魔をすることができるが、移動速度が遅い。逆にイカの形態のときは、攻撃行動がまったくできない代わりに、自らが塗ったインクの中に「センプク」し、高速でステージ内を移動することができるのだ。さらに「センプク」してる間は姿が見えづらいため、 陣地を広げようと安易にブキを片手にヒト形態で近づいてきた相手を奇襲することもできる。

……そしてゲームに慣れてくると薄々わかってくるのであるが、おそらく『スプラトゥーン』というゲームの肝は、この「センプク」という行動にある。

お互いのチームがお互いに陣地を拡げようとステージを塗り合っていくわけだから、当然陣地がぶつかる地点に前線ができる。そしてその前線を上げる動きの中に「センプク」を中心とした駆け引きがあるわけだ。

こう書いてしまうとただ「センプクの待ちが強い」ゲームであると言えそうなのだが、その「待ち」を崩すためのサブブキやスペシャル行動はとても強力かつ個性的なものが揃っており、前線付近でただ相手が顔を出すのを待っているだけでは逆にすぐに追い込まれてしまう。

そしてサブブキを使いながら追い込んだり追い込まれたりする中でイカにメインのブキを当てるか? という駆け引きはまさに――あの『カスタムロボV2』の駆け引きそのものではないか!

カスタムロボV2』もメインのガンは癖の強いものが多く、相手のガン攻撃を避けてからその硬直に自らのガンを差しこんでいく行動が強かった。基本的に自分から攻めるにはボムやポッドで相手を追い込みつつ安全に攻めていかなくてはならない。

……僕は年甲斐もなく感動してしまった。

あれだけ面白かったのにいつの間にか終了してしまった『カスタムロボ』というIPが、『スプラトゥーン』の中に形を変えて生き続けているということに。

それは『スプラトゥーン』の戦略や戦闘システムを支える数多のミームの中で僕が勘違い的に発見した、面影と言えるだけの部分なのかもしれないが。

 

オンラインゲームは知らないうちに、そして当たり前に、昔の友人ともしかしたら一緒にゲームをプレイしているかもしれないという奇跡を有する

『丸見え』『木曜洋画劇場』そして『カスタムロボV2』……

僕は彼のプレゼンテーションを受けて、彼が愛するものについては大体のことを知っていたのだけれど、彼自身のことについては驚くほど何も知らなかった。また、彼もほとんど自身のことについては何も語ろうとしなかった。

気づいたら彼は学区内で一番の進学校に進んでいた。思えば彼はたしかに文武両道で、僕らと遊ばない日の放課後はもちろん、休みの日までも部活に明け暮れ(柔道の大会で何度も入賞していた)、そのあと夜遅くまで学習塾にも通っていたのだろう。

きっと彼は周りに比べて変に渋いこだわりをもっていたわけではなくて、ただ単に僕のように周りに流されている暇さえもなかっただけなのだと思う。限られた時間で自分が好きなものを精一杯愛していただけなのだ。そしてきっと少しだけ空いた時間に、僕らと遊んでくれていた。

高校生になると、彼はもう引っ越してこの町からはいなくなった、という噂が流れた。実際に中学校卒業以来、一度も会っていない。地元で行われた成人式でも会うことはできなかった。

そして彼の愛した『丸見え』も、『木曜洋画劇場』も、『カスタムロボ』も、気づいたらひっそりと全部終わってしまっていた。

……オンラインゲームをプレイしていると、不意に

「ある時期から音信不通になってしまった友人と、この中でお互いに気づかないまま対戦している可能性は、0ではないんだよな」

と思うことがある。

彼はどうだろう。

何となく大人になってもゲームをプレイし続けているようなタイプとは思えないが、それでももしかしたら、子どもにせがまれて一緒に『スプラトゥーン』ぐらいならプレイしているかもしれない。

……いや、ひょっとしたらむしろ逆で、子どもに対して

「それでは日本の大人気ゲームから、今夜は『スプラトゥーン』をご覧いただこう!」

とかプレゼンテーションしているかもしれないな。『丸見え』風に。

……本当にそんな可能性だって、0ではないのだ。